本作が放送から年月を経ても語り継がれる最大の要因は、主要キャスト4名による息をのむようなアンサンブルにあります。2組の対比的な夫婦が織りなす相関関係は、単純な愛憎を超えた緊張感で満たされていました。
中谷美紀が演じた佐藤真弓は、明るくがむしゃらで、家族のために自分を犠牲にしながらもプライドを失わない現代女性の象徴です。真弓が放つストレートな怒りと悲哀のセリフの数々は、多くの視聴者の胸を打ちました。それに対し、玉木宏が体現した佐藤秀明は、悪意はないものの「妻の機嫌を取ることばかり考え、本質的な対話を避ける」という、世の多くの夫が持つ無自覚な弱さをリアルに体現し、絶妙な生々しさを醸し出しました。
そして本作のサスペンス度を極限まで引き上げたのが、茄子田夫妻を演じた木村多江とユースケ・サンタマリアです。木村多江が見せた「しおらしさの裏に潜む凄まじい執念」は、SNS上で「ホラーより怖い」と大きな話題を呼び、当時の特番インタビュー等でも「綾子という女性の孤独を徹底的に突き詰めた」と語られるほどの怪演となりました。また、ユースケ・サンタマリア演じる太郎の、モラハラ全開の言動の奥にある脆さと滑稽さは、ドラマに重層的な深みをもたらしました。
さらに、物語の不穏な空気と疾走感を決定づけたのが、Superflyが歌う主題歌「Fall」です。ジャズとロックが融合したスリリングなサウンドと、抗えない衝動に堕ちていく人間の心理を描いた歌詞は、毎話のクライマックスで絶妙なタイミングで流れ、視聴者を劇的な世界へと強く引き込みました。