猫の神経疾患の中で飼い主が最も見落としやすいのが、てんかん発作の初期症状です。てんかんと聞くと、全身をガクガクと震わせて口から泡を吹く大発作(全般発作)を想起しがちですが、発症初期や軽度の段階では、脳の一部分だけが異常興奮する「焦点性発作(部分発作)」にとどまるケースが多々あります。
この焦点性発作が猫の睡眠前後に発生すると、飼い主の目には「少し激しい寝ピク」にしか見えません。たとえば、顔面の片側だけが引きつるようにリズミカルに痙攣する、何もない空中に向かってハエを捕まえるように口をパクパク・クチャクチャさせる(フライバイティング)、片方の前足だけが小刻みに突っ張り続けるといった症状です。これらは大脳の特定領域で異常放電が起きている確固たる証拠であり、放置すると次第に興奮が全脳へと波及し、激しい全般発作へと悪化していく傾向があります。
さらに見極めるべきは、発作の直後に出現する意識障害や寝起きのふらつきです。正常な夢であれば、目を覚ました猫はあくびをして体を伸ばし、普段通りに歩き出します。しかし、てんかん発作や脳神経疾患の可能性がある場合、発作後に「発作後発作(postictal state)」と呼ばれる中枢神経の機能低下が生じます。具体的には、以下のような異変が顕著に現れます。
- 起きた直後、腰が抜けたように後ろ足がもつれ、まっすぐ歩けずに壁へ体をぶつける
- 名前を呼んでもボーッとして飼い主の顔を認識できず、焦点が定まらない
- 見えない何かに怯えるように部屋の隅を猛スピードで徘徊し続ける
- 一過性の視覚障害(一時的な失明)を起こし、家具に激突する
- 発作の直後に異常な喉の渇きや、取り憑かれたような過食行動を見せる
これらの一連の異常行動が睡眠の後に観察された場合、寝ている間に起きていたピクつきは夢ではなく、中枢神経系を揺るがす深刻な発作であったと判断しなければなりません。