紫苑の花言葉が怖い真相とは?「君を忘れない」今昔物語の由来と背景

紫苑の花言葉が怖い真相とは?「君を忘れない」今昔物語の由来と背景

紫苑の花言葉が怖い真相とは?「君を忘れない」今昔物語の由来と背景に関する知りたいポイントを初心者にも親しみやすくまとめました。要点を確実におさえることができます。

紫苑の花言葉の核心を理解するには、平安時代末期に成立したとされる説話集『今昔物語集』(巻第三十一・第十八話)に記された兄弟の物語を避けて通ることはできません。ここには、死と忘却、そして記憶をめぐる人間の根源的な葛藤が克明に描かれています。

物語は、父親を亡くした二人の兄弟が深い悲嘆に暮れる場面から始まります。喪に服する日々が続く中、多忙な公務や日々の暮らしに追われた兄は、いつまでも消えない悲しみに耐えかね、父の墓前に「萱草(かんぞう=忘れ草)」を植えました。萱草を見つめることで、悲痛な父の死を忘れ、日常を取り戻そうとしたのです。一方、心優しい弟は「父の思い出を決して忘れたくない」と願い、墓前に「紫苑(しおん=思い草)」を植え、日夜墓参りを続けました。

月日が流れ、墓参りをやめた兄に対し、弟は何年経っても雨の日も風の日も墓前に通い、咲き誇る紫苑を眺めては亡き父を追憶し続けました。その尋常ならざる孝心に心を打たれたのが、墓場に棲む一本足の「鬼」でした。鬼は弟の前に姿を現し、こう語りかけます。

「私はこの墓所を守る鬼である。兄は萱草を植えて父を忘れ去ったが、そなたは紫苑を植えて悲しみを忘れることなく、誠を尽くし続けた。その尊い心に報いるため、そなたに吉凶をあらかじめ知る『予知の力』を授けよう」

予知能力を授かった弟は、その後さまざまな災厄を逃れ、立身出世を果たして幸福な人生を送ったと結ばれています。つまり、原典における紫苑は不吉の象徴どころか、「誠実な愛が奇跡を起こし、幸福をもたらす瑞祥の花」として描かれているのです。にもかかわらず、「墓場」「鬼が現れる」という怪異の舞台装置だけがセンセーショナルに語り継がれた結果、「紫苑の花言葉は怖い」という誤解が定着したといえます。

なお、この逸話から紫苑には「鬼の醜草(オニノシコグサ)」という異名が付けられました。「醜(しこ)」とは古語で「強い・剛勇な」という意味を含み、鬼をも感銘させた強い草であることを物語っています。また、古来より恋や偲ぶ心を象徴する「思い草」という別名も、この説話の情念の深さに深く根ざしています。

鈴木 陽菜
著者

鈴木 陽菜

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