本作を語る上で避けて通れないのが、言語芸術としての異常な完成度です。日本のHIP HOPシーンにおいてR-指定 韻の踏み方はひとつの到達点と評されますが、本作はそのショーケースと言っても過言ではありません。
楽曲全体を通じて展開されるのは、単なる単語の尻を合わせる「脚韻」にとどまらず、小節全体で母音の並びを完全に一致させる複雑な押韻構造です。子音の破裂音(パ行・タ行・カ行)をアタックの強い位置に配置することで、ビートに対するパーカッシブな推進力を生み出しています。また、早口のフロウでありながら一音一音の子音が潰れず、言葉の意味がストレートに耳へ飛び込んでくる驚異的な滑舌も特筆すべき要素です。
さらに、随所に散りばめられた合法的トビ方ノススメ パンチラインの数々は、聴く者の認知を揺さぶります。一聴すると怪しげな取引現場の描写でありながら、文脈を読み解くと「レコードの針を落とす動作」や「スピーカーの前で頭を振る様」へと見事にすり替わるダブルミーニング。リスナーを煙に巻きつつ、最終的には「音楽の力」にひれ伏させる言葉の構築美は、まさに職人芸の領域に達しています。