ポーカーフェイスを貫き、普段通りのおどけた態度で怪我を覆い隠そうとした御幸でしたが、身近で彼を見守る人間たちの鋭い観察眼をごまかすことはできませんでした。
最も早く違和感を見抜いた相棒・倉持洋一
御幸の異変に誰よりも早く、正確に気づいたのは、副主将であり同室のルームメイトでもある倉持洋一でした。成孔戦の翌朝、ベッドから起き上がる際の一瞬の躊躇、無意識に左脇腹をかばう仕草、そしてゴミ箱に残された湿布の痕跡から、倉持は確信に至ります。
倉持は御幸を呼び出し、「ふざけんな、テメエ一人の身体じゃねえんだぞ!」と激昂しながら事実を問い詰めます。しかし、御幸の「ここまで来てベンチで見ているなんて俺にはできない」「チームを勝たせるためにグラウンドに立ちたい」という鬼気迫る覚悟を前に、倉持は最終的にその秘密を共有する共犯者となる道を選びました。「無理だと判断したら俺が無理矢理にでも監督に言って交代させる」という厳しい条件を突きつけ、主将の覚悟を背中で支え抜いたのです。
首脳陣・チームメイト・対戦相手の洞察
倉持のほかにも、複数の人物がそれぞれの視点から御幸の異常を察知していました。
- 渡辺久規(ナベ):観察力に長けたスコアラーとして、試合前のキャッチボールや打撃練習における御幸のスイング軌道の僅かなズレをいち早く見抜く。
- 前園健太:もう一人の副主将。倉持と御幸の異様な空気感から異変を察知し、自分たちがいかに主将一人に重圧を背負わせていたかを痛感して結束を固める。
- 轟雷蔵監督&真田一樹(薬師高校):百戦錬磨の敵将・轟雷蔵は、試合序盤の御幸の打撃フォームと捕球時の反応速度の遅れから「脇腹を痛めている」と即座に看破。インコースを突く攻めを展開し、青道バッテリーを心理的・戦術的に追い詰めた。
- 沢村栄純&降谷暁:エースを争う投手陣も、マウンド上で受ける気迫の裏にある違和感を肌で感じ取っていた。特に終盤の沢村は、御幸の呼吸の乱れと覚悟を受け止め、「この人のために投げる」という投球でチームを牽引した。
- 片岡鉄心監督:試合の推移とともに御幸の不調を察知していたものの、グラウンド上の主将が見せる揺るぎない眼差しと覚悟を信じ、あえて代打や交代を出さずに試合の命運を託した。