逝去の報以降、ネット上では「なぜNHKは過去の出演ドラマを一挙に地上波再放送しないのか」「権利トラブルでアーカイブが封印されているのではないか」といった憶測が散見されました。しかし、これらには放送業界特有の権利処理プロセスに対する誤解が多分に含まれています。
まず押さえるべき事実は、NHKの「番組公開ライブラリー(NHKアーカイブス)」と、地上波・BSでの「全国再放送」、そして「NHKオンデマンドでの配信」は、それぞれ適用される法律と権利契約が全く異なるという点です。全国各地のNHK放送局に設置されているアーカイブス施設では、すでに多くの出演映像が学術・鑑賞目的として合法的に公開されています。決して映像自体が抹消されたり、封印されたりしているわけではありません。
一方で、テレビ放送やオンデマンド配信を行うためには、共演者、原作者、脚本家、劇中使用楽曲の著作権・著作隣接権者など、膨大な関係者からの個別許諾を再取得する必要があります。特に90年代以前の映像は、当時の契約書に「インターネット配信」や「将来の二次利用」に関する包括条項が存在しないケースが大半です。関係者の証言によれば、NHK編成部側も再放送や追悼特集の編成に向けて精力的に権利者との調整を進めてきたものの、関与する権利元の多寡によって時間を要しているのが実情です。悪意ある封印ではなく、正当な権利保護の手続きを慎重にクリアしている最中というのが真相です。