太宰治のイラストがこれほどまでに熱狂的な支持を集める背景には、媒体ごとに異なる高度なアートディレクションが存在します。文ストのビジュアル表現は大きく分けて、原作担当の春河35先生による原作イラストと、アニメーション制作を手掛けるボンズ(bones)のアニメ公式画像という2つの大きな潮流によって形作られています。
春河35先生の描く太宰治は、水彩画のような淡いグラデーションとシャープな主線が織りなす、文学的で透明感のある空気感が特徴です。瞳の奥に宿る虚無感や包帯の質感、風になびくトレンチコートのドレープなど、静止画でありながらキャラクターの内面世界を雄弁に物語る筆致は、まさに神絵と称されるにふさわしい完成度を誇ります。コミックス表紙や『ヤングエース』誌面を飾る表紙イラストでは、季節ごとの花言葉や文学的モチーフが巧みに散りばめられており、ファンによる考察が絶えません。
一方で、アニメ版のキャラクターデザイン・総作画監督を務める新井伸浩氏をはじめとするスタジオ・ボンズのクリエイター陣は、映像としての躍動感と陰影のコントラストを極限まで追求しています。版権イラストやBlu-ray/DVDパッケージ、キービジュアルとして公開される文スト太宰治公式書き下ろしは、夜の横浜を背景にしたシリアスなライティングや異能発動時のエフェクトが鮮烈で、画面から飛び出してくるかのような圧倒的迫力を放っています。