物語の中盤以降、読者を最も驚かせたのが第4王子ツェリードニヒと第9王子ハルケンブルグの年齢と過去の因縁です。容貌や醸し出す威圧感からツェリードニヒを40代近いベテランと捉える読者も少なくありませんでしたが、作中の経歴データを照合すると実年齢は20代後半から30歳前後と推計されます。
ハルケンブルグはわずか15歳で世界最高峰のミザイストム級大学へ飛び級入学を果たし、アーチェリー世界大会で銀メダルを獲得した文武両道の超天才です。現在20代前半の彼は、大学時代にツェリードニヒと親友関係にあり、哲学や国家論について深く語り合う間柄でした。この事実から逆算しても、ツェリードニヒの実年齢がハルケンブルグと同年代であることが裏付けられます。
しかし、同じ学舎で議論を交わした二人の歩んだ道は対極でした。ハルケンブルグが王政の廃止や民主化を志す理想主義の改革者となったのに対し、ツェリードニヒは人間の皮を剥ぎ取って蒐集する猟奇的な快楽殺人者へと変貌しました。ツェリードニヒが持つ「絶」状態からの10秒間の未来予知・改変能力と、ハルケンブルグが部下たちの意志を結集させて放つ「不可避の弓矢(魂を上書きする能力)」の対立は、若き天才二人が迎えた悲劇的な宿命の衝突を描き出しています。