都内屈指の学生街でありビジネス街でもある水道橋の地で、連日多くのファンで賑わっていた店舗が営業を終了した際、飲食業界やファンの間には大きな衝撃が走りました。讃岐うどん大使水道橋麺通団の閉店理由について、当時ネット上では「大手チェーンとの競合に敗れたのではないか」「味の路線変更による客離れではないか」といった様々な憶測が飛び交いました。
しかし、当時の飲食業界関係者の証言や周辺テナントの動向を検証すると、最大の要因は物件の定期建物賃貸借契約の満了に伴う事業再編でした。水道橋駅西口から徒歩数分という好立地ゆえに、ビル側の更新条件や耐震・リノベーション方針の見直しが重なり、多店舗展開全体の採算性を見直すタイミングが訪れたことが直接の引き金となっています。
加えて、2010年代中盤から急速に加速した人手不足と原材料費・人件費の高騰も背景にありました。讃岐うどん特有の手打ち・店内茹で上げオペレーションと、セルフ方式による圧倒的な低価格提供を両立させるビジネスモデルは、都心一等地における固定費上昇の影響をダイレクトに受ける構造となっていたのです。東京讃岐うどんの名店が辿った経緯を振り返ると、ブームの熱狂期から日常食への定着期へとシフトする過渡期における、必然的な店舗統廃合の一環であったことが分かります。