発達心理学の講義や各種資格試験で受験者を最も悩ませるのが、ハヴィガーストとエリクソンの理論的差異です。両者はともに「生涯にわたる発達」を肯定的に捉えたパイオニアですが、その思想的背景とアプローチの切り口には明確な違いが存在します。
エリクソンはジークムント・フロイトの精神分析理論を拡張し、人生を8段階に分けた心理社会的発達理論(ライフサイクル論)を提唱しました。エリクソンの枠組みでは、各段階において相反する心理的葛藤(例えば、青年期における「アイデンティティ(自我同一性) vs アイデンティティの拡散」、壮年期における「生殖性(ジェネラティビティ) vs 停滞」)が生じ、その対立を乗り越えることで固有の「徳(Virtue:希望、意志、忠誠、愛、世話など)」を獲得すると説きます。
対するハヴィガーストは教育学者としてのバックグラウンドを持ち、よりプラグマティック(実用主義的)です。内面的な無意識や精神力動の葛藤を掘り下げるのではなく、「社会生活を送る上で達成すべき学習項目・行動目標」を具体的にリストアップしました。教育や支援介入によって「学習・獲得可能である」と考えた点がハヴィガーストの独自性です。
国家試験問題で「対立概念(vs)」「アイデンティティの拡散」「生殖性(世代継承性)」という言葉が出た場合はエリクソン、「〜の習得」「〜への適応」「市民的責任の受託」という具体的な行動規範が出た場合はハヴィガーストと識別するのが鉄則です。