ひつまぶしの起源には、名古屋の食文化を象徴する歴史的な名店が深く関わっています。
明治6年(1873年)創業の老舗「あつた蓬莱軒」は、「ひつまぶし」を商標登録(登録商標第1996631号)していることでも知られます。当時、出前で使っていた陶器の丼が割れやすかったことから、割れない木製のお櫃(ひつ)を採用。さらに、出前先で大勢が取り分けやすいよう鰻を細かく刻み、ご飯と混ぜて提供したことが始まりとされています。
一方、錦三丁目に本店を構える「いば昇」もまた、ひつまぶしの元祖として名高い名刹です。明治時代、硬くなった蒲焼をいかに美味しく食べるかという工夫から、上質な煎茶をかけて食べるスタイルを生み出しました。現代でも「いば昇」では出汁ではなく、香り高い緑茶をかける伝統のスタイルを守り続けています。
食材を無駄にせず、工夫を凝らして最高峰の美味へと昇華させた先人たちの知恵が、現在のひつまぶし文化の根底に流れています。