感謝の言葉を投げかけられた際、どのようなリアクションを返すのが洗練されているのか。日本の語学教材を開くと、決まって「どういたしまして」の訳語として「チョンマネヨ(천만에요)」が掲載されている。しかし、現代ソウルの実態調査や現地ネイティブの証言を突き合わせると、驚くべき実態が浮き彫りになる。
実態として、街頭の対話やオフィスの現場で「チョンマネヨ」を耳にする機会は皆無に近い。SNSや知恵袋等のコミュニティでも「韓国に3年住んでいるが、一度もチョンマネヨと言われたことがない」「ドラマで聞くのは時代劇くらい」という声が多数を占める。言語学的に見ても、チョンマネヨの意味は「千万(あり得ない、滅相もない)」という古風な語源を持ち、英語の「You're welcome」の直訳として教科書に定着してしまった経緯がある。現代の感覚では芝居がかって聞こえ、日常会話では不自然さを拭えない。
現地で圧倒的に支持されているカムサハムニダの返し方は、謙遜のニュアンスを含むアニエヨの返答である。「아니에요(アニエヨ=いえいえ、とんでもないです)」と軽く手を振りながら微笑む仕草こそが、最もこなれたネイティブの作法だ。より丁寧に返したいビジネスや年配者相手の場では、「아닙니다(アニムニダ=とんでもございません)」、あるいは「별말씀을요(ピョルマルスムルヨ=お礼には及びません)」を用いるのが知的な大人の振る舞いとされる。
さらに親しい関係であれば、「네〜(ネー=はーい)」と柔らかく返事をしたり、「제가 더 감사하죠(チェガ ト カムサハジョ=私の方こそ感謝しています)」と返したりするやり取りが、韓国日常会話フレーズにおけるスマートな定番として機能している。