「どんなにあやしても泣き止まない夕暮れ時、この絵本を開いた瞬間に泣き声が止まり、凝視し始めた」という証言は、単なる都市伝説や偶然の産物ではありません。本シリーズの生みの親である東京大学赤ちゃんラボの開一夫教授らは、大人が「赤ちゃんが好きそう」と直感で選ぶデザインと、当の乳児が実際に興味を示す対象との間に横たわる決定的なズレに着目しました。
研究チームは、実験室において乳児に複数のイラストを同時に提示し、アイトラッキング(視線追跡)技術を駆使して「どちらをより長く、熱心に見つめるか」を徹底的に測定しました。数多くの試作のなかで、圧倒的な注視時間を記録したのが、イラストレーターの市原淳氏が描いた、勾玉(まがたま)のような不思議なフォルムを持つキャラクター「もいもい」でした。大人の目には一見して何を表しているのか分からない有機的な形状と、高コントラストの色彩設計こそが、未発達な赤ちゃんの視覚神経を強く刺激する最適解だったのです。
言語聴覚および発達心理学の観点からも、反復される「もいもい」という快活なオノマトペ(擬音語・擬態語)は、乳児の聴覚野を心地よく刺激します。視覚と聴覚の双方が同時に惹きつけられることで、それまで不快感や疲労から泣き叫んでいた赤ちゃんの意識が急激に「注視・探索」へと切り替わります。これが現場で報告される「もいもい 絵本 効果」の正体であり、もいもい どこどこ 泣き止むという現象の科学的メカニズムです。