遭遇した初夜、ヒグマはテント脇に置いてあった荷物(ザック)を漁り始めた。パーティーのリーダーを務める竹末一夫氏は、装備と食料を守るため、クマが離れた隙を狙ってザックを取り戻す。ラジオや音を鳴らして追い払うことには一度成功した。
だが、この防衛行動が事態を決定的に悪化させる。ヒグマには「一度自分の物と認識した執着物を奪い返されると、激しい執着心と攻撃性を見せる」習性があるのだ。人間の当然の判断が、猛獣の追跡本能へ火をつけてしまった。クマは諦めることなく夜通しパーティーを猛追。逃走する隊員たちを一人、また一人と追い詰めていった。