「ネットに入れて弱水流で回せば大丈夫ではないか」という甘い推測は、ニューエラキャップにとって命取りとなります。ニューエラの製品タグに記された洗濯表示の多くが水洗い不可となっている背景には、ヘッドウェア特有の精密な製造構造が存在します。ニューエラを洗濯機に入れてはいけない理由は主に3点に集約されます。
第1に、フロントパネルを内側から支える「芯地(硬化加工されたバックラム生地)」の崩壊です。特に59FIFTYや9FORTYのフロント部分は、糊付けされた特殊な芯材によって直立した美しい形状を保っています。洗濯機内部の強い水流に晒されると、この樹脂糊が溶け出してコシを失い、フロントパネルに無数のシワやヨレが発生します。
第2に、バイザー(ツバ)内部の芯材へのダメージと湾曲の変形です。近年のバイザー芯にはプラスチック素材が多用されていますが、脱水時の強力な遠心力(およそ毎分800〜1000回転)がかかると、偏った外圧によってツバが歪んだり、生地と芯材の間に剥離が生じてブツブツとした気泡のような浮きが発生します。
第3に、縫製糸の引きつれとウール・コットン生地の収縮です。特にクラシックモデルに用いられるウール100%素材は、水分と摩擦が加わることでフェルト化現象を起こし、実寸で1〜2サイズ(約1〜1.5cm)縮小して着用不能に陥る事例が頻発しています。大切なキャップの立体美を守るためには、家庭用洗濯機の使用は完全に選択肢から排除しなければなりません。