川越観光といえば、まず思い浮かぶのが黒漆喰の重厚な蔵造りが並ぶ一番街周辺でしょう。しかし、近年「一番街よりも居心地が良い」「歩いていてどこか懐かしく温かい」と再評価の波が押し寄せているのが、まさにこの川越の大正浪漫夢通りです。かつて「銀座通り」と呼ばれたアーケード街から1995年以降に屋根を撤去し、電柱を地中化、御影石の石畳を整備したことで、大正ロマンの風情を湛えた唯一無二の景観へと生まれ変わりました。
最大の魅力は、通りを取り囲む小江戸川越のレトロ建築の密度です。関東大震災後に防火対策と意匠性を両立させるために発達した「看板建築」——建物の前面を洋風のパラペットやモルタル、銅板で洋風レリーフ風に仕上げた独特のファサードが、数多く現役で稼働しています。大正15年建築の重厚な銀行建築(旧川越武州銀行川越支店)をはじめ、木造三階建ての商家や銅板葺きの店舗が切れ目なく連なる様は、歩行者にとってタイムスリップしたかのような非日常体験をもたらします。
この景観美は映像業界からも高く評価されており、朝ドラ『つばさ』をはじめ、映画やCMの定番ロケ地としても起用されてきました。オープンセットには出せない本物の生活感と歴史の陰影がカメラ越しにも伝わるため、作品のファンが聖地巡礼に訪れるケースが後を絶ちません。
さらに現在の過熱ぶりを牽引しているのが、20〜30代の若年層や外国人観光客による大正浪漫夢通りの着物レンタルブームです。一番街の純和風な町並みとは異なり、この通りでは「袴にレースのインナー」「ブーツにベレー帽」といった大正モダンスタイルの装いが風景に美しく調和します。御影石の緩やかなカーブとレトロ建築を背景にしたポートレート写真はSNSでも際立ったエンゲージメントを生み出し、体験型観光の中心地としての地位を確固たるものにしています。