記録の向上を語る上で欠かせないのが、テクノロジーとルールのせめぎ合いだ。ワールドアスレティックス(World Athletics / 国際陸連)は、カーボンプレートや高反発フォームを搭載した「新世代スパイク」のソール厚や硬度について厳格なレギュレーションを敷いている。一方で、国際オリンピック委員会(IOC)とともに推進するトラック自体の反発性能向上や舗装技術の進化は、ランナーの推進力を確実に後押ししている。
道具と環境の進化は、スプリンターの走法そのものにも変化を促した。地面からの反力をダイレクトに骨盤と体幹へ伝える「フォアフット接地」の技術や、反発エネルギーをロスなく前進力へと変換するバイオメカニクス的トレーニングがスタンダード化。かつての筋力頼みの加速から、腱の弾性と神経伝達速度を極限まで高める科学的アプローチへとパラダイムシフトが起きている。