世界の命運を背負わされた勇者。諸悪の根源とされた魔王。両者の死闘が終わった瞬間、物語は祝福ではなく冷え切った静寂から幕を開ける。「目的を果たしたから故郷へ帰る」という極めて純粋で素朴な動機が、周囲の国家権力や残された異世界人たちのエゴによって容赦なく踏みにじられていく。
救世主を神格化して囲い込みたい王宮、次なる脅威を恐れて軍事力として利用しようとする貴族たち。刀を置きたい主人公の意志とは裏腹に、世界は彼をただの「兵器」として拘束しようとする。この生々しい権力闘争と主人公の冷徹な諦観のコントラストこそが、読者を惹きつけて離さない引力となっている。