インターネット上のランニング解説や旧来の学校体育において、いまだに根強く残る「足を速くするためのアドバイス」の中には、運動生理学的に逆効果となる誤解が散見されます。
その代表例が「もも(太もも)を高く上げろ」という指導です。太ももを過剰に高く引き上げようとすると、骨盤が後傾して腰が引けたフォームになり、着地位置が体の前方へズレて強烈なブレーキがかかります。現代のスプリント理論において、太ももは「自力で無理に上げる」ものではなく、「地面を正しく押した反動で勝手に上がってくる」のが正しい生体力学的反応です。
もう一つの典型的な罠が「歩幅(ストライド)を広げて大股で走れ」というものです。筋力が未発達な小学生が大股で走ろうとすると、接地時間が長くなりピッチ(足の回転数)が極端に低下します。小学生が50メートル走のタイムを短縮するための最適解は、大股を意識することではなく、「接地時間を極限まで短くし、テンポよく回転させること」に尽きます。