「100円の刃物で、本当にあの硬質なアクリル板をきれいに割断できるのか」という懸念に対して、技術的な結論から言えば、板厚2mm程度までであれば十分な切断能力を発揮します。ただし、そのためにはプラスチックカッターが持つ特殊な物理的切断メカニズムを正確に把握していなければなりません。
一般的なペーパーカッターは「鋭利な刃先を押し込んで素材の繊維を押し広げる」ことで切断します。しかし、ガラスのように硬質で脆性(ぜいせい:外力によって破壊されやすい性質)を持つアクリル板やポリスチレン板に通常のカッター刃を当てても、表面に浅い傷がつくだけで刃先が滑り、最悪の場合は刃が砕け散って怪我をする危険があります。
プラスチックカッターの刃先は、鋭い鉤爪のような形状をしており、「削りカスを掻き出しながらV字状の深い溝を彫り込む」というカンナに近い役割を果たします。具体的な使い方の手順は次の通りです。
まず、金属製の定規をカットラインにしっかりと当て、滑り止めのついた手袋などでブレないように固定します。刃の先端にある鉤爪の角をアクリル板に当て、力を入れすぎずに手前に向かってスーッと引きます。最初の数回はガイドとなる浅いスジをつける程度にとどめ、溝が定まったら徐々に荷重をかけて削りカスをリボン状に掻き出していきます。
ここが最大のポイントですが、プラスチックカッターは板を最後まで切り落とす工具ではありません。アクリル板の厚みの約3分の1から半分程度まで均一に溝を掘り進めたら、作業台の角や角材のヘリに溝のラインを合わせ、板の両端を均等に押さえて下方向に「パキッ」と瞬間的に折り曲げます。素材の応力集中を利用して一気に割断(クラッキング)させることで、直線的で美しい切断面が得られるのです。
なお、工作素材として人気の高い「プラダン(プラスチック段ボール)」の切断に関しては、プラスチックカッターではなく、一般的な大型カッターナイフや波刃加工の段ボール専用カッターを使用するのが鉄則です。中空構造になっているプラダンにPカッターの鉤爪を使うと、表面の薄いリブに引っかかって内部構造を潰してしまい、滑らかな断面を作ることが困難になるためです。