実写映画『GANTZ』の撮影を象徴する過酷な要素といえば、キャスト陣全員を苦しめた「GANTZスーツ」の存在です。1着あたり数十万円、総制作費数千万円とも報じられた特注のフルラバースーツは、極限までボディラインを際立たせるために極めてタイトな設計が施されていました。
GANTZスーツと本郷奏多の親和性は、スタッフ陣の予想を遥かに超えていました。全身を締め付けるラバー素材は通気性が皆無で、真冬の寒風に晒されれば体温を奪い、アクションを行えば内部に汗が溜まる過酷な代物でした。キャスト陣の多くが着脱に30分以上を要し、筋肉痛や息苦しさを訴えるなか、華奢で細身な体躯を誇る本郷のスーツ姿は、まるで原作の描線をそのまま3次元に転写したかのようなシルエットを描いていました。
また、主演の玄野計を演じた二宮和也と本郷奏多の共演も、現場の緊張感とクオリティを押し上げる重要なピースとなりました。劇中では、新参者の玄野に対して冷酷な先輩戦士として振る舞い、過酷なデスゲームへと突き放す西くん。しかしカメラが止まった瞬間、現場の空気は一変していたといいます。当時から現場の空気作りにおいて天賦の才能を発揮していた二宮は、極度の人見知りで緊張しがちだった本郷に対し、共通の趣味であるポータブルゲームの話題を振るなどして一気に距離を縮めました。
二宮が醸し出すナチュラルなリアリズムの演技と、本郷が追求する研ぎ澄まされた記号的演技。この2つのアプローチが対峙したからこそ、理不尽な死線に放り込まれた一般人(玄野)と、狂気に染まりきったベテラン戦士(西)という劇的なコントラストが生まれたのです。本郷自身も後に、二宮の柔軟なアドリブ対応と現場での視野の広さに深い感銘を受けたと語っており、俳優としての基礎体力を培う決定的な契機となりました。
前編の田中星人戦で壮絶な最期を遂げた西くんですが、続編の『GANTZ PERFECT ANSWER』では原作とは異なる映画オリジナルの復活劇を果たし、物語の結末を揺るがすトリックスターとして再び圧倒的な存在感を放ちました。映画オリジナル展開でありながら、西丈一郎というキャラクターの行動原理から逸脱しなかったのは、脚本段階から本郷の演技への絶対的な信頼があったからに他なりません。