「最初は指一本動かすのにも、途方もない時間がかかった」——後に周囲へ語ったように、発症当初のリハビリは孤独と焦燥の連続だった。現役時代の華やかなプレーとは程遠い、地道で泥臭い作業の繰り返し。だが、ここで彼の「アスリートとしての本能」が目を覚ます。
かつて練習場に誰よりも遅くまで残り、納得がいくまでフリーキックを蹴り込み続けたあの情熱。それをそのままリハビリへと傾注したのだ。できないことを嘆くのではなく、昨日より1ミリでも前に進むこと。リハビリ室で見せる彼の眼光は、現役時代に壁の枚数とゴールキーパーの立ち位置を見極めていたあの鋭い眼差しそのものだった。