そもそも、これほどまでに特定の個人が概念化された背景には、2000年代初頭の日本のインターネット文脈が存在する。過酷な競争が続く成人ビデオ業界において、COAT CORPORATIONが制作したオリジナルビデオ『真夏の夜の淫夢』に登場した一人の男性出演者が、すべての元点だ。
当初はアングラなコミュニティ内でのパロディ対象に過ぎなかった。しかし、その強烈なインパクトとツッコミどころの多い言動が、当時の若者たちの奇妙な琴線に触れた。ネット上の匿名掲示板において徹底的に改変・抽象化が重ねられた結果、実在の人物という枠組みを超え、一種のアイコンとしての「野獣先輩」が完成することとなったのである。