新語・流行語大賞の歴代一覧と選考の真相|なぜ話題作は落選したのか

新語・流行語大賞の歴代一覧と選考の真相|なぜ話題作は落選したのか

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毎年の発表日当日、X(旧Twitter)のトレンド上位は「流行語大賞」関連のワードで埋め尽くされます。しかし、その内実をテキストマイニングで精査すると、祝福の声以上に目立つのが「ネットの反応と批判」です。「私の周りでは誰一人使っていない」「選考委員の政治的・思想的偏向ではないか」「野球ばかり優遇されている」といった声が判で押したように噴き上がります。

この激しい世論との乖離が生じる背景には、主に3つの構造的要因が存在します。

第1に、選考委員メンバーの構成と世代的フィルターです。選考委員会は、姜尚中氏(東京大学名誉教授)、俵万智氏(歌人)、室井滋氏(女優・エッセイスト)、やくみつる氏(漫画家)、佐々木圭一氏(コピーライター)、金田一秀穂氏(言語学者)といった、知性と教養を備えた文化人・言論人によって長年構成されてきました。彼ら・彼女らが評価するのは、TikTokやショート動画で一瞬消費されるような「脊髄反射的な響き」ではなく、「言葉の背後にある知的な諧謔(かいぎゃく)」や「活字文化として残すに値する文脈」です。この選考眼が、若年層を中心とするデジタルネイティブの「今まさに指先でタイピングしている言葉」との間に不可避のズレを生み出します。

第2に、情報空間のアルゴリズム分断(エコーチェンバー現象)です。かつてのように「日本人の8割が同じ夜8時のバラエティ番組を見ている」状況は完全に崩壊しました。YouTube、X、Instagram、TikTokなどのタイムラインは個人の趣味嗜好に合わせて完全にパーソナライズされています。結果として、「自分の界隈では1億回再生されている超メガトレンド」が、隣のデスクに座る同僚には「人生で一度も聞いたことがない未知の単語」となる事態が日常茶飯事となっています。国民全体が均一に体験する流行そのものが消滅した時代において、たった1語の「年間大賞」を指名すること自体が、原理的に全員の納得を得られない構造を抱えているのです。

第3に、「野球過剰評価」に対するファンの不公平感です。「トリプルスリー」「神ってる」「村神様」「アレ(A.R.E.)」と、過去10年あまりの間でプロ野球関連の言葉が異例の頻度で年間大賞に輝いてきました。新聞・テレビのスポーツ報道枠が依然として野球を基軸に組まれているオールドメディアの力学と、地上波中継を見ない若年層のスポーツ消費スタイルの乖離が、「野球界の内輪ネタではないか」という不満を増幅させています。

山本 拓海
著者

山本 拓海

デジタルガジェットとスマート家電の検証記事を多数執筆。失敗しないモノ選びを提案します。