映画および原作小説には、人生の迷いや家族との軋轢に苦しむ私たちの心に刺さる数々の名言が散りばめられています。
「父さん、僕を愛してくれなくてもいい。でも、せめて僕の存在を認めてくれ」
(キャルが父アダムへ向けた魂の叫び。単なる甘えではなく、自らの居場所を求める切実な願いが凝縮されています。)
「アロンを愛しているのは、彼が完璧だからじゃないわ。でもキャル、あなたと一緒にいると、私は本当の自分でいられるの」
(アブラがキャルに告げる言葉。完璧さを求めるアロンの重圧から解放され、互いの弱さを認め合える関係こそが真の愛であると示しています。)
そして、スタインベックが原作小説全体を通じて提示した最重要のキーワードが、ヘブライ語の「ティムシェル(Timshel)」です。
神が罪を犯そうとするカインに対して告げた言葉について、ある翻訳では「お前は罪を治めよ(命令)」、別の翻訳では「お前は罪を治めるだろう(予言)」とされていました。しかしスタインベックは、この言葉の真の意味を「Thou mayest(汝、治むることを得=治めることができるかもしれない)」という人間の自由意志と選択の権利であると解釈しました。人は生まれ持った悪や宿命に縛られる必要はなく、自分の意志で善き道を選ぶことができる――この「ティムシェル」の思想こそが、本作が絶望的な悲劇で終わらない決定的な理由です。
また、本作を語る上で欠かせないのが、レナード・ローゼンマンが作曲した叙情詩のような主題歌と名曲の数々です。哀愁に満ちたオーボエと壮大なストリングスが織りなすメインテーマは、ヴィクター・ヤング楽団の演奏盤が全米ヒットチャートを席巻し、日本でもラジオや映画音楽番組の定番として広く親しまれました。キャルの乾いた心を潤すかのような美しい旋律は、映像と不可分の一体感を誇っています。