なぜ京都人は「おくどさん」と呼ぶ?竈との決定的な違いと再燃する薪火熱の真相

なぜ京都人は「おくどさん」と呼ぶ?竈との決定的な違いと再燃する薪火熱の真相

なぜ京都人は「おくどさん」と呼ぶ?竈との決定的な違いと再燃する薪火熱の真相の具体的な内容に迫る! わかりやすい言葉で紐解きます。

電気炊飯器が極限の進化を遂げた現在でも、一流の料理人が「薪とおくどさんで炊いた白米には敵わない」と口を揃えます。この官能評価の裏付けを調査すると、おくどさんで炊くご飯が美味しい理由には明確な調理科学の必然性がありました。

日本調理科学会などの知見によれば、米の美味しさを決める最大の要素は、デンプンが熱と水分によって粘りと甘みを持つ状態に変化する「糊化(アルファ化)」の度合いです。理想的なアルファ化(糊化度95%以上)を達成するには、沸騰までの立ち上がりが鋭く、沸騰後は釜の内部で米粒が激しく踊る強烈な熱対流を維持し続ける必要があります。

おくどさんの構造は、この条件を物理的に完璧に満たします。耐火粘土やレンガで築かれた厚い壁体は、薪の燃焼熱を吸収して大量の遠赤外線(波長3〜30マイクロメートル)を放射します。金属板ヒーターのような表面加熱とは異なり、遠赤外線は羽釜の鋳鉄を透過して釜の底面だけでなく側面全体から包み込むように内部へ熱を送り込みます。

さらに、羽釜特有の「鍔(つば)」がおくどさんの吹きこぼれを受け止めつつ、開口部の熱気を逃さず釜の上部まで均一に滞留させます。これにより、一般的な家庭用熱源では不可能な毎分100回以上の超高速対流が発生。米一粒一粒の外側が崩れることなく中心部まで一気に熱が通り、細胞壁が保たれたまま内部のデンプンが膨潤します。結果として、噛んだ瞬間に弾力があり、冷めてもデンプンの老化(ベータ化)が起きにくい極上のご飯が炊き上がるのです。

前田 葵
著者

前田 葵

マーケティングと消費者心理のトレンドを分析し、現代のヒット商品の背景を読み解きます。