市民や沿線住民の間で長年にわたり議論の的となってきたのが、千葉都市モノレール 延伸計画の真相です。当初の基本構想では、現在の路線網にとどまらず、複数の延伸ルートが具体的に検討されていました。その代表格が、1号線の県庁前駅から千葉大学医学部附属病院、市立青葉病院、中央博物館を経由して星久喜方面へ延びるルートと、2号線の穴川駅からJR総武線の稲毛駅方面へと向かうルートでした。
特に病院や大学が集積する青葉病院ルートは、高齢化社会における通院アクセスや渋滞緩和の切り札として大きな期待を集めていました。しかし、この計画は最終的に推進見送り、事実上の白紙撤回へと追い込まれることになります。関係資料や当時の検討委員会が下した結論を読み解くと、3つの決定的な壁が存在していました。
第一の壁は、莫大な建設費と費用便益比(B/C)の低迷です。高架構造物を密集した市街地や急勾配の地形に新設するには数百億円単位の公金投入が必要でした。採算性を厳格に試算した結果、投じるコストに対して得られる社会的便益の数値が「1.0」を大幅に割り込む結果となり、事業認可の前提が崩れました。
第二の壁は、運営主体である第三セクターの財務リスクです。かつて巨額の建設債務を抱え経営危機に直面した千葉都市モノレールは、千葉市や千葉県による経営再建支援を経てようやく黒字基調を確立した歴史があります。再び巨額の借入金を背負って延伸工事に踏み切ることは、市政運営と会社経営を再び破綻の危機に晒しかねないという極めて現実的な危機感がありました。
そして第三の壁が、既存路線バス網との競合です。病院や大学へは既に千葉駅や蘇我駅から高頻度で路線バスが運行されており、「莫大な税金を投じてモノレールを延伸しなくても、バス優先レーンの整備や電気バス(EVバス)の導入など代替策で十分に対応可能である」という都市交通政策上の客観的判断が下されたのです。将来の財政負担を回避するための極めて合理的で苦渋の決断だったと言えます。