分類論争をさらに深掘りすると、植物形態学における驚くべき構造上の真実に突き当たります。普段私たちが「果実」として味わっている甘くてジューシーな赤い部分は、植物学的には果実ではありません。ここには、園芸学と植物学による分類の経緯と形態観察の精緻な視点が隠されています。
イチゴの赤い部分とつぶつぶの真相(偽果)を解き明かす鍵は、花の構造にあります。イチゴの可食部である赤い肉質部分は、花を支えていた茎の先端部分である「花托(かたく)」または「花床(かしょう)」が、受粉の刺激によって大きく膨らんだものです。子房以外の器官が肥大化してできた果実状の部分を、植物学では「偽果(ぎか、accessory fruit)」と呼びます。
では、植物学上の「本当の果実(真果)」はどこにあるのでしょうか。その答えは、表面に無数に散らばっている小さな粒々(種のように見えるもの)にあります。この一粒一粒は「痩果(そうか)」と呼ばれる独立した小さな果実であり、その薄い果皮の内側に、植物の次世代を担う本当の「種子」が1粒ずつ内包されています。つまり、私たちがイチゴを1個頬張るとき、実は「肥大化した茎の表面に並ぶ約200個から300個の果実」を一度に口へ運んでいることになります。