西武新宿線の東村山駅から柳瀬川に沿って歩みを進めると、住宅街の喧騒がふっと遠のき、クヌギやコナラが枝を広げる一角が現れます。ここが淵の森緑地です。所沢市に居を構えていた宮崎駿監督にとって、この川沿いの林は日課の散歩コースであり、思索を深める大切な場所でした。
1988年に公開された『となりのトトロ』の舞台設定には、近隣の八国山緑地や所沢の田園風景とともに、この淵の森の空気感が深く溶け込んでいます。サツキとメイが駆け回ったあの鬱蒼とした森の匂いや、川風に揺れる木々のざわめきは、監督がこの地で肌で感じていた武蔵野の原風景そのものです。作品が世界的な名作となった後も、監督はこの森の木漏れ日をこよなく愛し続けました。