低山地や深山、あるいは特定の樹林帯に生息する小型種・珍種にも、見落とせない身体的特徴が凝縮されています。
コクワガタと生息域が重なり混同されやすいのがスジクワガタのメス見分け方です。スジクワガタのメスは、オオクワガタのように上翅に何本もの細い縦条(スジ)が刻まれています。「体長20mm前後でコクワガタにそっくりなのに、背中にハッキリとした筋がある」という個体は、ほぼ間違いなくスジクワガタです。また、アゴの内側にある小歯が幅広く、先端が二股状(二峰性)に切れ込む点もスジクワガタ特有の識別点となります。
マツやシイの混交林の根元など特殊な環境に棲むネブトクワガタのメス特徴は、体長15mm前後という小柄さと、まるで彫刻刀で彫り込んだかのような極めて深い上翅の縦溝条線です。全体的にずんぐりとした楕円形で、前脚の脛節が幅広く外側へ湾曲しているため、一度実物を見れば他のクワガタと見間違うことはありません。
ブナ帯などの高標高地で採集されるアカアシクワガタの腹部特徴は、名前通り「赤さ」に集約されます。背中側から見ると光沢のある漆黒のスマートなクワガタですが、個体をひっくり返して腹面を見た瞬間、脚の腿節および腹部腹板全体が鮮やかなワインレッドから朱色に染まっています。この鮮烈な赤色は他種には一切存在しないため、裏返すだけで1秒で判別が完了します。
なお、昆虫採集ビギナーの家庭で時折相談されるのがクワガタとカブトムシのメスの違いです。同じ黒褐色の中大型甲虫ですが、カブトムシのメスは体表全体が細かな点刻と短い剛毛で覆われており、ザラザラとした質感で光沢がほとんどありません。頭部には小さな角の痕跡である「コブ状の突起」が3つ並んでおり、前脚の脛節には土を掘るための幅広で強烈なトゲが発達しています。アゴもクワガタのように前方に突き出さず、口器の内側に隠れる構造になっているため、顔周りを見れば即座に見分けがつきます。