「保湿リップを毎日念入りに塗っているのに、数週間経っても一向に傷が塞がらない」「少し良くなっても、大笑いした拍子に再びパックリ割れてしまう」――こうした慢性化に悩むケースでは、炎症のメカニズムそのものを取り違えている可能性が高まっています。
口の端が切れて治らない理由として、臨床現場で最も警戒されるのがカンジダ性口角炎です。カンジダ菌とは口腔内や皮膚に存在する常在真菌(カビの一種)ですが、疲労や加齢、抗生物質の長期服用などによって免疫力が落ちると異常増殖します。口角が白くふやけたようにただれ、強い赤みやひび割れが長引くのが特徴的な症状です。
このカンジダ性口角炎に対し、一般的なステロイド外用薬や油分過多なリップクリームを使用すると、真菌の活動をかえって助長し、炎症を深刻化させるという落とし穴があります。
さらに、無意識に行っている日常のNG習慣が治癒を妨げている実態も浮き彫りになっています。
代表的な悪循環が「唇を舌で舐めて湿らせる行為」です。唾液に含まれるアミラーゼなどの消化酵素は、デリケートな口角の皮膚を刺激します。さらに、唾液が蒸発する際に周囲の水分まで奪い去るため、乾燥が加速して傷口の再断裂を招くのです。また、生じたかさぶたを気にして手で無理に剥がす行為も、新生組織を破壊し瘢痕化(傷跡が硬くなること)の原因となります。