日本のロックシーンを立体的に理解するためには、現在地だけでなく、脈々と受け継がれてきた音楽的遺伝子を辿る視点が欠かせません。日本のロック史において、1990年代はまさに「バンドカルチャーが社会現象化した黄金期」でした。
90年代邦楽ロックバンド代表曲を振り返れば、THE YELLOW MONKEYの「JAM」や「太陽が燃えている」に見られるグラマラスな歌謡ロックの情緒、GLAYの「誘惑」やL'Arc〜en〜Cielの「HONEY」が提示したミリオン連発のキャッチーな疾走感、さらにはBLANKEY JET CITYやTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTが打ち立てた無骨なガレージロックの衝動など、現在の20代・30代フロントマンたちが公言してやまないルーツがそこに凝縮されています。
さらに、アンサンブルの極限形態として日本独自の進化を遂げたのが、最小編成のスリーピースロックバンド名鑑に名を連ねる猛者たちです。10-FEETが放つ泥臭くも圧倒的なシンガロング、UNISON SQUARE GARDENが誇る超人的な手数と計算し尽くされた変拍子ポップネス、そして若者の赤裸々な情念を激情のパンクに乗せるMy Hair is Badなど、3人編成ゆえの音の隙間と爆発力は、いつの時代もリスナーの心臓を直撃してきました。
また、近年のチャートを鮮やかに彩っているのが、多彩な表現力を持つ女性ボーカルロックバンド一覧の躍進です。椎名林檎率いる東京事変が確立した圧倒的な美意識と超絶技巧の系譜は、豊かなポップセンスと力強いボーカルで国民的認知を獲得した緑黄色社会や、オルタナティブ・シューゲイザーの浮遊感で海外からも熱烈な視線を集める羊文学、重厚なシンフォニックロックとエモーショナルな歌唱で頭角を現すAliAへと受け継がれています。単なる「紅一点」という枠組み組みを完全に過去のものとし、現代ロックの表現領域そのものを拡張し続けています。