この楽曲の真価を理解するには、作者であるHIPPY自身が味わった壮絶なキャリアの谷間を知る必要があります。地元・広島を拠点に活動を続けていた彼は、メジャーデビューを果たしたものの、思うように結果が出ず、契約解除の危機や音楽活動への迷いに直面していました。自著や特番インタビューの中で、本人は当時の心境を「スポットライトの当たらない場所で、自分自身の存在価値を見失いかけていた」と赤裸々に告白しています。
転機となったのは、同じように夢を追いながら苦闘していたアスリートたちとの直接の交流でした。怪我に泣き、二軍で泥にまみれ、それでも歯を食いしばってバットを振る若手選手たちの姿に、HIPPYは自らの境遇を重ね合わせます。机上の空論や上辺だけの綺麗事では、本気で戦う人間の心には届かない。そう痛感した彼がノートに書き殴ったのは、「立ち上がれ」という安易な命令形ではなく、「悔しさを知るお前だからこそ、もう一歩踏み出せる」という、痛みの共有から始まるリリックでした。
2017年3月にリリースされたアルバム『HomeBase〜ありがとう〜』に収録されたこの曲は、当初から大々的な宣伝予算が投じられたわけではありませんでした。しかし、有線放送や地元ラジオ、そして何よりも選手たちの自主トレ先での口コミを通じて、燎原の火のごとくスポーツ界へと浸透していったのです。