私たちが日常で目にする文字は、大きく分けて「手書きを忠実に再現した文字」と「金属活字やデジタル表示のためにデザインされた印刷文字」の2つの系統に分かれます。ひらがな「れ」において、この二者の構造的断絶は特に顕著に表れます。
明治期に活字印刷が日本に導入された際、中国から伝わった木版印刷の明朝体を手本にフォントが開発されました。明朝体の「れ」は、右側の縦画を垂直に下ろし、終端にアクセントとしてのウロコや折れを持たせることで、長文を組んだ際の行の乱れを防ぐ工夫が凝らされています。これに対し、昭和初期以降の教育現場向けに作られた教科書体は、毛筆の筆使い(とめ・はね・はらい)を硬筆鉛筆でも再現できるよう、骨格そのものが手書きに寄り添って設計されています。
書体ごとの具体的な特徴と、実生活での適用基準を整理した以下の比較表を確認してみましょう。
印刷書体はあくまで「読むための形」であり、教科書体や肉筆文字は「書くための形」です。この印刷体と手書き文字の違いを把握していないと、活字の輪郭を鉛筆で不自然に模倣してしまい、手書き特有の伸びやかさが失われる原因になります。