「この不調は一生治らないのではないか」と絶望する患者の多くに見られるのが、熱中症後遺症としての自律神経失調症と、熱による脳への影響です。熱中症の急性期において、人間の脳は異常な高熱と重度の脱水、急激な血圧低下に晒されます。体温調節を司る視床下部が一時的に「オーバーヒート」を起こすと、体温コントロール機能や自律神経バランスの復元には相当の時間を要します。
熱中症後に激しい倦怠感が続く大きな理由は、細胞レベルの脱水と微小循環不全による慢性的な酸素不足にあります。筋肉や内臓の細部組織が受けた炎症性ダメージは、血液検査の数値が正常範囲内に戻った後も完全には沈静化していません。その結果、日常のわずかな動作でも乳酸などの疲労物質が急蓄積し、強烈な「だるさ」として自覚されます。
さらに、頑固な頭痛やふわふわとする浮動性めまいは、脱水によって傷ついた血管内皮の修復遅延や、自律神経の失調に伴う脳血管の拡張・収縮リズムの破綻が直接のトリガーとなります。不可逆的な細胞死に至っていない限り「一生治らない」というわけではありませんが、組織の自己修復には段階的なアプローチと数週間から数ヶ月単位の療養期間が必要不可欠です。