劇場アニメ『閃光のハサウェイ』でスクリーンに現れたクスィーガンダムを見た際、多くのファンが「自分の知っている顔と違う」と強い衝撃を受けました。長年『SDガンダム Gジェネレーション』や『機動戦士ガンダム EXTREME VS.』シリーズなどをプレイしてきた世代にとって、クスィーガンダムの顔といえば、白を基調としたマスクに「への字スリット」が刻まれ、V字アンテナを冠した「端正なイケメンガンダム顔」が共通認識だったためです。
しかし、劇場版で採用されたクスィーガンダム劇場版デザインは、口元のスリットが排除されたツルリとしたマスク、有機的で切れ長の目つき、そして左右に大きく広がった凶悪とも言える大型アンテナを備えたものでした。一見すると敵側のモビルスーツや怪獣を思わせるこの造形こそ、メカニックデザイナーの森木靖泰氏が1989年の小説刊行当時に描き起こした森木靖泰オリジナルデザインの忠実な再現です。
劇場版のアニメーションディレクターおよびメカニックデザイン陣(中谷誠一氏・カトキハジメ氏ら)は、本作を映画化するにあたり「テロ組織マフティーの象徴であり、地球連邦体制を根底から揺るがす異形の巨大兵器」としての存在感を最重要視しました。主人公ハサウェイ・ノアが背負う業(ごう)と組織の非合法性を表現するため、従来のヒロイックなガンダム像を意図的に解体し、小説版が持っていた不気味さと威圧感を現代最高峰の作画密度で蘇らせたのが、このクスィーガンダム顔の違いを生んだ決定的な背景です。