インターネット上の掲示板やSNSでは、どんと祭に関して長年まことしやかに囁かれている誤解がいくつか存在します。文化人類学的・神道文化の視点から、それらの誤認を是正します。
第一の誤解は、「どんと祭の御神火は、何でも燃やしてくれる万能の焼却炉である」という極端な認識です。前述の通り、松焚祭は正月にお迎えした歳神様(年神様)を、煙に乗せて天にお送りするための「神聖な送火」神事です。家庭の不用品や、神社と関係のない日用品を処分する場ではありません。心なき持ち込みが神社のボランティアや神職の負担となり、近年社会問題化しています。神仏への礼を失した物品の持ち込みは厳に慎むべきです。
第二の誤解は、「煙を浴びれば浴びるほど御利益が増す」として、立ち入り禁止柵の限界まで強引に近づこうとする行為です。御神火から立ち上る白煙を体に引き寄せるように浴びる所作は、新年の無病息災・家内安全を祈る伝統的な作法(風にあたることで悪鬼を払い清める習俗)ですが、火柱の近くは風向きによって強烈な火の粉や熱風が舞います。化繊のダウンジャケットやナイロン製のアウターは、飛来した火の粉によって一瞬で小さな穴が空いてしまいます。高価な衣料の着用は避け、綿やウールなど難燃性の高い素材の上着を選び、無理な接近は避けるのが賢明な参拝作法です。