物語の結末において、なぜ幼いエンポリオの生き残り理由が成立したのか。そこには作中における緻密なロジックとテーマ性が存在します。プッチ神父は「覚悟こそが幸福」と説き、全人類にあらかじめ自らの未来を体験させることで、運命を受け入れる世界を作ろうとしました。しかし、エンポリオはウェザー・リポートの「記憶のDISC」を自らに装填し、酸素濃度を操作する純粋な科学的窒息攻撃によってプッチ神父を完全に打倒しました。
プッチが時の加速を完了させる前に死亡したため、「プッチが存在した歴史」そのものが消滅した新しい世界線へとシフトします。ここで登場するのが、徐倫と魂の同位体であるアイリンです。
空条徐倫とアイリンの違いは、背負っている「宿命」の有無に集約されます。
- 空条徐倫(旧世界):「ジョジョ(JoJo)」の名を冠し、100年以上続くジョースター家とDIOの因縁の最前線に立たされ、刑務所への投獄、過酷なスタンドバトル、そして死を強いられた。
- アイリン(新世界):名前に「Jo」の重なりがなく、ジョースターの戦いの歴史から解放された。父親(承太郎)との関係も極めて良好で、恋人アナキスとの結婚を父親に報告しに行くという、ごく普通の女性としての幸福を享受している。
ラストシーンでアイリンの肩に星のアザが描かれているのは、彼女が徐倫の魂の正統な継承者である明確な証拠です。空条徐倫が生きて転生した姿こそがアイリンであり、彼女の笑顔は、散っていった徐倫たちの戦いが無駄ではなかったことを証明しています。