時計の針を少し巻き戻そう。この独特な味の原点は、創業者の五十嵐一郎氏が中華料理の担々麺を独自にアレンジし、川崎の地に根付かせた歴史にある。豚ガラベースの澄んだスープに粗挽き唐辛子、溶き卵、そしてゴロゴロと入ったニンニクと挽肉。一般的な胡麻ペースト主体の担担麺とは完全に一線を画すそのビジュアルと中毒性は、「元祖ニュータンタンメン本舗」の看板とともに数世代にわたって川崎市民の身体へ刷り込まれてきた。
だが、守るだけではカルチャーは停滞する。舵を取る株式会社タンタンが近年見せる一手は、実にアグレッシブだ。コロナ禍以降、外食産業全体が営業形態の再定義を迫られるなか、同社が導き出した答えの一つが「大衆酒場への完全特化」だった。麺をすする前の助走として、酒と肴を心ゆくまで楽しむ。古き良き昭和の大衆酒場が持っていた猥雑さと温もりを現代のフォーマットに落とし込み、ブランドのアイコンを再構築したのである。