今池グランドビルが持つ独特の風情を理解するには、千種区今池という街が背負ってきた歴史を紐解く必要があります。かつて今池は、名駅や栄と並び称される「映画と演芸の街」でした。
戦後の高度経済成長期から昭和後期にかけ、今池には「今池劇場」「今池国際劇場」「キネマ今池」「今池地下劇場」など数多の名画座や映画館がひしめき、昼夜を問わず映画ファンや労働者で溢れかえっていました。娯楽の殿堂として誕生した大型ビルには映画館や遊技場が組み込まれ、文化発信の最前線を担っていたのです。今池グランドビルやその周辺施設も、そうした昭和の大衆娯楽の興隆を支える基盤として機能していました。
シネマコンプレックスの台頭やインターネット配信の普及によって映画館街としての役目は徐々に終焉を迎えましたが、その器となった建物には、今も往時の賑わいの残り香が色濃く刻み込まれています。現在サウナやアミューズメントとして使われているフロアの広々とした間取りや堅牢な躯体構造は、かつて多くの人々が娯楽を求めて殺到した時代の名残と言えます。