3Dペンの性能や使い勝手を左右する最大の要素は、インクに相当するフィラメントの材質選定です。外見はどれも色鮮やかなプラスチックの線材に見えますが、原料と物性はまったく異なります。知らずに違う素材をペンへ投入すると、内部で融解不良や焦げ付きを起こし、一発で修理不能の故障に至ります。
現在流通する主なフィラメント規格は、以下のPCLとPLAの2系統です。
PCL(ポリカプロラクトン):融点が約60℃と非常に低い生分解性ポリエステルです。低温ペンの専用素材であり、溶け出た直後の樹脂を素手で押し広げたり成形したりできるのが最大の特徴です。万が一片付け忘れた樹脂をぬるま湯(60℃以上)に浸けると再び柔らかくなるため、成形ミスを修復しやすいメリットもあります。柔軟性に富んでおり、落下させても割れにくい反面、真夏の直射日光が当たる車内や窓辺に放置すると変形する弱点を持っています。
PLA(ポリ乳酸):トウモロコシやサトウキビなど植物由来のデンプンを発酵させて製造される樹脂で、融点は約180〜200℃に達します。高温ペンの標準素材であり、冷却すると高い硬度と美しい光沢を放ちます。空中に細く引き伸ばした際、空冷ファンや自然冷却によって数秒で硬化するため、立体トラス構造や高精細な建築モデリングには不可欠な素材です。ただし加熱時のノズルは熱湯をはるかに超える危険温度になるため、取り扱いには細心の注意を払わねばなりません。
各メーカーが設定している「対象年齢」の根拠は、単なる手先の器用さではなく、この「熱源に対する身体的危険認知と反射能力」に基づいています。6歳〜8歳未満向けを謳う製品はすべてPCL採用の低温設計であり、PLAやABS対応機が10歳〜14歳以上を対象としているのは、重大な火傷事故を未然に遮断するための明確な安全基準なのです。