数々の伝説が生まれた聖地、彩の国さいたま芸術劇場。ここは蜷川幸雄が心血を注ぎ、世界水準の作品を世に送り出し続けた砦である。小栗にとっても、この劇場の舞台を踏むことは常に自らの原点と向き合うことを意味していた。
巨匠が去ったあとも、劇場の空間には蜷川の息遣いと情熱の残り香が充満している。小栗はその空間で培った演劇的知性を、単に舞台上だけに留めず、映像やプロデュースワークを含めた現代日本演劇全体のアップデートへと還元している。劇場の客席を埋める観客の熱量を肌で知る表現者だからこそ、商業性と芸術性の高次元での融合を模索し続けることができるのだ。