本作に触れる読者が最も気にするポイントは、「泥棒と探偵、結局どっちが勝ったのか?」という勝敗の行方でしょう。結論から述べると、両作品の対決は「名目上は痛み分け、実質はお互いの目的を果たした最高の引き分け」という着地を見せています。
TVスペシャルにおいて、ルパン一味の真の目的はヴェスパニア王国の秘宝を盗むことではなく、かつてルパンが世話になった前女王サクラの死の真相究明と、孤立無援となったミラ王女の保護でした。コナンは鋭い推理で王室内乱の黒幕を暴き立て、ルパンは裏で巧みに立ち回って王女の命を救います。事件解決後、コナンはルパンを逮捕しようと試みますが、ルパンは潜水艦を使って鮮やかに脱出。その際、ルパンは「江戸川コナン=工藤新一」である事実をすでに見抜いていることを匂わせ、コナンを愕然とさせました。
そして2013年の劇場版『THE MOVIE』では、この結末が巧みな伏線として回収されます。劇中に登場する秘宝「チェリーサファイア」を巡る事件の裏には、軍事転用可能なステルス性を持つ「ヴェスパニア鉱石」の密輸取引という巨悪が潜んでいました。コナンとルパンは敵対するポーズを取りながらも、背後のマフィア組織「アラン・スミシー」を追い詰めるため、見事な阿吽の呼吸で連携します。
クライマックスでは、墜落する輸送機から海へ投げ出されたコナンを、ルパンが命がけでダイブして救出。その後、コナンはルパンの逃亡ルートを先回りして包囲網を敷きますが、ルパンもまたコナンの読みを織り込み済みで逃走劇を演じます。決して相手を屈服させるのではなく、「相手の知略を読み切った上で一手先を指す」という、知性派同士の粋な駆け引きこそがこの対決の真骨頂でした。