北九州は「角打ち(酒屋の店頭で立ち飲みすること)」の聖地として知られる。かつて八幡製鉄所などの工場で働く人々が、夜勤明けにふらりと立ち寄って乾杯したのが始まりだ。この泥臭くも温かいカルチャーが、今や「エモい体験」として若者や欧米からの旅行者に再評価されている。
老舗の酒販店が営む立ち飲みスペースには、ヴィンテージの日本酒から地元産のクラフトジンまでが並び、隣り合った見知らぬ者同士が自然とグラスを交わす。SNSでの拡散も手伝い、週末には満席で入れない店も珍しくない。スマートフォンの翻訳アプリを片手に、地元のおじさんと肩を並べて地酒をすする外国人観光客の姿は、もはや小倉の日常風景だ。