美味しいオイル漬けを作るための戦いは、スーパーの鮮魚コーナーに立つ瞬間から始まっている。近年の海水温上昇や気候変動は、国内の水産業に小さからぬ影響を与えており、水産庁の統計や報告でも沿岸養殖の育成環境の変化が指摘されている。その中で、安定して良質な脂質とアミノ酸を蓄えたマガキ(Crassostrea gigas)を見極める眼力は、調理技術以上に重要だ。
食品加工業の基準では、オイル漬け用には「加熱用」の牡蠣が強く推奨される。「生食用の方が新鮮で美味しいのでは」と誤解されがちだが、生食用は出荷前に紫外線殺菌水などで数日絶食させて浄化するため、身が痩せて水分量が多くなる傾向がある。対して加熱用は、栄養豊富な沿岸のプランクトンを直前までたっぷり吸収しているため、グリコーゲンやタウリンが豊富で身が太い。パックを選ぶ際は、乳白色の身がこんもりと盛り上がり、縁の黒い帯がはっきりと濃く、ドリップ(パック底の濁った水)が出ていない個体を選ぶのが鉄則だ。