町中華の定番「ニラ玉」と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、溶き卵とニラを強火で一緒に炒め合わせたふんわりとした黄色と緑のコントラストでしょう。しかし、八丁堀の中華シブヤが提供していた一皿は、その既成概念を根本から覆すものでした。
運ばれてきた皿を目の当たりにした初見の客は、誰もが息を呑みました。平皿の底には、絶妙な半熟加減で焼き固められた大判の黄金色オムレツ。その頂上に鎮座するのは、1人前あたりニラ約1把半(150g〜180g)を惜しみなく使い、強烈な漆黒のタレでテリを放つニラの山です。卵とニラを混ぜ合わせず「土台」と「主役」に分断するセパレート構造こそが、シブヤ流の真骨頂でした。
箸を入れると、ニラはシャキシャキとした小気味よい食感を残しながら、噛むほどに芳醇な甘みとほのかな苦味を放ちます。そこへ間髪入れずに絡みつくのが、ニンニクのパンチとオイスターソースの重厚なコクを湛えた濃厚ダレ、そして舌の上でとろける半熟玉子のまろやかさです。この味覚の三段論法が白米を欲する本能を容赦なく刺激し、大盛りご飯があっという間に消え去る現象が店内のあちこちで巻き起こっていました。