「保険証の色で年収や勤務先のランクが筒抜けになる」という言説は、結論から言えば制度上の根拠がまったくない誤解です。健康保険法をはじめとする関係法令において、被保険者の所得水準や企業の資本金規模に応じて保険証の色を義務付ける規定は一行たりとも存在しません。
それにもかかわらず、なぜ「緑や青は上位」「赤やピンクは下位」といった噂が全国的に広まったのでしょうか。その背景には、大企業が単独または共同で設立する「組合管掌健康保険(組合健保)」において、清潔感や信頼感を想起させる寒色系(淡いブルーやネイビー)を採用するケースが比較的多く見られたという偶然の事実があります。
一方で、公務員が加入する共済組合では黄色や緑色、中小企業の従業員が中心となる「協会けんぽ(全国健康保険協会)」では水色、自営業や無職の方が加入する「国民健康保険」では毎年ピンク・薄緑・オレンジなどがローテーションで使用されてきました。この「発行組織ごとの傾向」が、人々の間で「所属企業の規模=年収=保険証の色」という短絡的なヒエラルキー幻想へとすり替えられたのが、噂の正体です。