インターネット上のコミュニティでは、「シャトルランの電子音が流れるだけで胃が痛くなる」「一種のトラウマ音源」といった書き込みが後を絶ちません。心理学および運動行動学の視点から見ると、この反応は古典的条件づけ(パブロフ型条件づけ)の典型例として説明できます。
学校教育の現場における体力テストは、集団の中で限界まで体力を削り、他者の視線を受けながら脱落していく過酷な社会的状況を生み出します。過呼吸に近い疲労感や筋疲労の苦痛と、規則正しく加速し続ける「ドレミファソラシド」の電子音が長年にわたり結びつけられた結果、成人に達したあとも音源を耳にするだけで自律神経系が交感神経優位へと急変し、心拍数上昇や筋緊張が引き起こされます。
さらに、音響デザインの面でも、減衰の少ない矩形波に近い電子音と段階的に高音化するスケール構造は、人間の脳幹部に対して「焦燥感」と「覚醒」を促す心理効果を持ちます。無駄な感情を排した無機質なビートだからこそ、走者は自分の身体の限界と直接対峙することを余儀なくされるのです。