近年、テレビ番組における過激な演出やイジリに対して厳しい視線が注がれるなか、ネット上の一部では「他者を突き落とす行為を助長するのではないか」という懸念が議論されることがあります。しかし、現場の実態と芸の構造を検証すると、そうした見方は根本的な誤解に基づいていることが明白になります。
上島竜兵さんが生前、数々の手記やインタビューで強調していたのは、「絶対的な信頼関係がない人間とは絶対に熱湯風呂をやらない」という鉄則でした。背中を押す側の力加減、落ちる側の受身の姿勢、湯船の底に敷かれた滑り止めや水深の把握など、現場ではミリ単位の安全確認が行われていました。
見ている側が心から笑えるのは、上島さんが「落とされることで最大の主役になり、最もおいしいポジションを獲得している」という共通認識がスタジオ全体に満ちていたからです。力関係の不均衡によるいじめとは対極にある、演者全員がお互いの命とプライドを預け合ったプロフェッショナルの共闘関係こそが、この芸の隠された本質なのです。