世界で一番小さい国はどこ?Tdlより狭いバチカン市国800人の真相

世界で一番小さい国はどこ?Tdlより狭いバチカン市国800人の真相

世界で一番小さい国はどこ?Tdlより狭いバチカン市国800人の真相の真相や最新動向に迫る! 専門的な視点でまとめました。

バチカン市国が近代国家の中で極めて異彩を放っている最大の理由は、その法制度、とりわけ「国籍とパスポート」の運用にある。

一般の国家であれば、血統(親の国籍)や出生地によって一生涯の市民権が与えられる。だが、バチカン市国の国民パスポート制度において、そうした常識は一切通用しない。バチカンの市民権は、教皇庁での勤務や公務という「役職」に対してのみ一時的に付与される「機能的市民権(Functional Citizenship)」なのだ。

たとえば、外国から招聘された高位聖職者や外交官、スイス衛兵は、着任と同時にバチカン国籍を取得し、濃い緑色または臙脂色のバチカン公用パスポートが支給される。しかし、任期満了や退職によって職務を離れた瞬間、バチカン国籍は自動的に消滅する。国籍を喪失した者は、国際法上の無国籍状態を防ぐため、出身国(主にイタリアなど)の原国籍へと戻る仕組みが条約上担保されている。

また、同国の国防と警備を担う「教皇庁スイス衛兵隊」の存在も現場のリアルを物語る。1527年のローマ略奪の際、命を賭して教皇クレメンス7世を守り抜いた史実に由来し、現在も入隊資格は「カトリック信徒」「兵役を終えたスイス市民」「19歳から30歳までの独身男性」「身長174cm以上」という極めて厳格な条件が課されている。ルネサンス調の伝統的な縞模様の制服を身にまといながら、中身は最新鋭の自動小銃や対テロ戦術訓練を修めた精鋭部隊である点も、観光客の目を引く大きなギャップだ。

なお、旅行者の間でSNSや知恵袋などで頻繁に話題となる「バチカンに入国してパスポートにスタンプを押してもらえるのか?」という疑問だが、結論から言えば一般観光客に対する入国審査やパスポートの記念スタンプ押印は行われていない。イタリアとバチカンの間には国境検問所がなく、自由に行き来できるシェンゲン協定エリアと同様のオープンな扱いとなっているためだ。その代わり、領内にある独自の「バチカン郵便局」から世界中へ手紙を投函し、独自の切手と消印を持ち帰ることが、訪問者にとっての確固たる「渡航の証」として定着している。

田中 結衣
著者

田中 結衣

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。